重戦車ＭＡＵＳ

民間自動車「フォルクスワーゲン」などで有名となったフェルディナンド・ポルシェ博士はその才能を戦車の分野にも発揮していた。しかし、彼の手による戦車は、ヘンシェル社との競作に敗れた「VK4501(P)」（ポルシェ製ティーゲル１）をはじめ、その多くが不採用となっていた。そこで、彼の才能に興味を示していたヒトラーはそれら不採用の代償の意味も含め、直接彼に超重戦車の開発を要請した。これが「マウス計画」である。重量は実に188tonにも達するものであり、1943年8月より試作車の製作が開始された。主武装には当初、55口径128mm砲が予定されていた(画のもの)が、後に150mm砲とそれに同軸の75mm砲とに変更された。これら砲を載せる砲塔は最大装甲厚240mmにも達する超重装甲のもので、重量は「５号：パンテル」約１両分の50tonにも達した。

ところが本車は「VK4501(P)」でも命取りとなった複雑な電気駆動方式（エンジンで発電機を回し、その出力でモーターを回して走る）を採ったため、エネルギーロスが多く、車体の殆どがその動力関係で占められていたにもかかわらず速度は20km/hと大変遅く、1.4kgf/cmにも達する高接地圧もあいまって機動性は極めて低いものであった。「マウス」という名はまるで皮肉のようである。２両の試作車が完成したが、戦局が悪化する中、このような実戦の要求を全く無視した戦車が正式化されるはずもなく、試験が行なわれただけで計画は1944年6月、中止された。

要目
製造年	1943
重量	188ton
全長	9.03m
全幅	3.67m
全高	3.66m
乗員数	6
最大出力	1200馬力-電気駆動
最大速度	20km/h
行動距離	190km
主砲	150mm 38口径 75mm 36口径
機関銃	7.92mm×2

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